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キリンのいる風景

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ここは築地場外市場。
これは何かというと干物などを売る店の看板だ。
何度か通っている路地だがこの日初めて気がついた。
このときは店がもう閉まっていたのだが
前に通りかかった時の記憶ではこの店、
たくさんのワカメやスルメなどと一緒に
タヌキか何かのはく製をいっしょに並べてあった。
ほかにも何体かあった記憶がある。
売り物としてなのか、単なるディスプレイなのか
とにかく「乾きモノ」と言う点では確かにいっしょである。
しかしそんな次元ではないことは
この看板をみれば火を見るよりも明らかである。
本当はハンターになりたかった。
「海のものを干して売るなんて俺はまっぴらだ!」
そう言って家を飛びだした14の春。
「チチキトクスグカエレ」届いた電報。
母は泣きながら父の最後の言葉を告げる。
「康夫、やりたいようにすりゃあいい…」
「かあさん、俺まちがってたよ。俺、この商売を継ぐよ」
しかし大草原でキリンを追う夢だけは捨てきれなかった。
そんな秘められた辛く悲しいストーリーがここにある。
いや、ないですけど。
でもきっと魚より動物が好きなんだと思う。